池袋で食事をする機会があったので、マイミクのかたが行ったというモンゴル料理「故郷」に行ってみた。
モンゴル料理は始めての経験。
というか、恥ずかしながらモンゴルと言われても、蒼き狼と白き牝鹿でオルドを楽しんだことと、モンゴルマンぐらいしか知識は無いぐらい。
あとはテレビ番組で見聞きしたぐらいなので、こうしてモンゴル文化に肌で触れるのは初めてだ。
食事をするとはいいながらも、やはりまずは酒を頼まずにはいられないのだが……
ウォッカが多いようだが、見たことの無い銘柄ばかりで、一瞬硬直する。
それに私はウォッカはあまり好きではないので、牛乳から造ったという蒸留酒、乳酒のボトルを頼んでみた。蒸留の回数によって度数が変わるそうで、店で人気の銘柄だという二回ほど蒸留をした25度ぐらいのものにしておいた。
変わった形状の銀製の杯で、これをストレートで呑む。
バニラっぽい甘い香りがするが、味はウォッカに近い。やはり蒸留酒で、正直、独特の香りが無ければ味のほうは特筆すべきものは無い感じ。
これなら蒸留を1度しかしていない、ワインのような味だと説明されたボトルにしておいたほうが面白みがあったかも。
肉好きの我々は、とにかく肉料理を頼む。
前菜など無しで、いきなりメインディッシュっぽいものを連続して頼むので店員さんもなんか呆れ顔。
まずは羊肉を香辛料などと一緒に石で焼く、ホルホグという料理。
ただ、ここの店のホルホグを見る限りでは、香辛料を使っているような感じがあまりしない。少なくとも見たところは香辛料らしきものはついておらず、味つけは塩のみかと思われる。
肉と一緒に蒸し焼きにしたらしいニンジンとジャガイモが添えられており、こちにもほのかな塩加減。
でかい肉の塊をナイフでザクザク切って、ステーキのように食べていく。塩だけなのに妙に美味しい。オーストラリアビーフの赤身の強い部分を食べているような濃い味を感じる。いま自分は羊の肉を味わっていると実感させられる料理である。
そして、続けてメインディッシュ第二弾。
羊肉の旨煮である。羊肉を圧力鍋で塩と一緒に煮込んだだけという料理。
肋骨とあばら骨ごと出されて、ナイフで切って食べるのだが、こちらのナイフは所持していたら漫画家が銃刀法違反で捕まりそうな代物。酒を呑みながらは扱いたくないモノである。
幸い店員さんが肉を切ってくれたので、我々は親鳥から餌をついばむ雛鳥のように切ってもらうはしから肉を喰らい、そして酒を呑む。
部位が違うせいかもしれないが、焼いた羊肉とは違ってこちらはプルプルに柔らかい。コラーゲンたっぷりという感じ。
味つけはやはり見た目どおり塩のみと思われる。
ここでお店の人が、肉ばかり食べる我々を見かねたのか、それともついでがあったのか、蒸し餃子がおすすめだからどうかと言ってきたので、注文してみる。
やや皮が厚めで、餡はやはり羊肉。肉汁を逃さず一口で頬張ると、羊の肉の香りが鼻に抜ける。ニラなどの香味野菜は入っていなかった様子。
中華料理の餃子に比べると、やややぼったい味かも。それとも、家庭料理風とでも言うべきか。
最後は新メニューだという清蒸羊肉という名の料理。
タマネギの上に、薄切りの羊肉を並べて蒸したもの。タマネギから出たスープが皿いっぱいになっている。こちらも目立った香辛料は無く、やはり塩味。
この肉とタマネギを、マントウ(肉まんの皮だけ)のようなものに挟んで食べる。
甘みのあるスープをマントウに染みて、なかなか美味しい。肉まんのスープがすべて外
に出てしまったような感じがしたので、皿のスープにマントウをつけて食べる。こうすると肉の塩加減とスープの甘みがほどよく混ざり合い、実に美味しい。
マナーがよろしくないのではと友人が言うが、皿についたソースをパンにつけて食べるのは絶対にマナー違反ではないというのが私の信条である。
そうしたら、店員さんがスープをつけて食べてくださいねとアドバイス。やはり美味しい食べ方というのは万国共通なのだ。
〆にアイラグを試す。モンゴルの健康飲料。馬乳酒と訳されることもあるが、アルコール度数は数パーセントと極めて低め。
ネットで調べてみると馬乳を発酵させたものらしいが、作っている様子を見てみると牛乳を使用しているようだ。そりゃまあ、日本で馬乳はそうそう手に入らないだろう。
私は混ぜ物無しのストレートを頼んだのだが、思わずぎょっとしてしまうほどの酸っぱさとヨーグルトのえぐさが口に広がる。カスピ海ヨーグルトが液状化したような感じだ。
カルピスのご先祖様だとかいう噂を聞いていたのですっかり油断してしまっていた。オレンジで割ったほうは、そこまでひどくない様子。
やはりブルガリアヨーグルトにですらジャムを混ぜる日本人には、ストレートはきつすぎたか……
店員さんはたらふく肉を食って、たらふく酒を呑んだあとでも、アイラグを飲めば翌朝の体調はばっちり。モンゴルの習慣を良くわかっているね、と言ってくれたが……正直、この飲み物はこれまでの美味しくて幸福だった気分を、かなり台無しにしてくれた感じである。
その後、日本でもよく知られているモンゴルのミルクティー「チャイ」を飲みながら一服。
モンゴルの茶と、ミルクとバターと塩の入ったお茶。お茶としての味は薄いのだが、口の中全体に独特のこくが広がるのはバターのせいだろうか。
想像していたより塩味がしないのは、日本人向けだからかも。もっとしょっぱいものだと思っていたが。
変わった味なのでおかわりしたら、これが妙に胃にもたれた。見た目はお茶でも、胃にはこってりした飲み物だったのかもしれない。
なにからなにまで初体験のモンゴル料理であったが、なかなか楽しめた。
すべてが塩味という調理法に、醤油大好き人間の友人はいまいちな顔をしていたが、塩だけでもあれだけ羊肉にバリエーションがでるというのは面白い。焼く、煮る、蒸すの三種類を食べ比べられたのも良い。
毎月行きたいというほどでもないが、年に一度ぐらいなら、羊肉が食べたくなったときに行ってもいいかも。
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